今頃になつて本棚晒し
http://d.hatena.ne.jp/inmymemory/20080914/1221363159
去年の九月にトラックバックをもらつてゐたのだけれど、忙しいのと、ちよつと更新しづらい理由があつて……。結局晒すのが、このお正月休み(旧暦)になつてしまひました。id:inmymemoryさん、どうもすみません。遅くなつてしまひましたが、ご結婚おめでたうございます。
といふわけで、日本語の教室にある本棚の一部です。写真を撮つたのは去年の九月です。まず日本語教育関係、辞書など。
「ないです」について
- 作者: カミュ,窪田啓作
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1963/07/02
- メディア: 文庫
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続きを読む弁護士は私の手首にその手を載せた。私はもう何も考えてはいなかった。しかし、裁判長は何もいい足すことはないかと尋ねた。私は考えてみた。私は「ないです」といった。(p.111)
ノダとノデ
『みんなの日本語』第26課で扱ふ「んです」について、先週ふと思ひついた。
「んです」といふのは、ノデを含む文が「ノハ構文」になり、ノデが後置されてゐる形だと考へればいいんぢやないか。
教科書の例文で見る。濡れた傘を持つて玄関に立つ人を見て、以下の文を言ふ練習。
この文は以下の理屈で理解すればいいのではないか。
雨が降っているノデ、傘が濡れている。
↓
傘が濡れているノハ、雨が降っているノダ(ろうか)。
↓
(前半は言語化されず)雨が降っているんですか。
濡れた傘を目にしたところから、その原因をさかのぼつて考へた、と。
「ノハ構文」(正式な名称は何だつけ)といふのは、以下のやうな形。
6時に起きた。
↓
起きたノハ6時ダ。
この本のおかげで、試験に合格できた。
↓
試験に合格できたノハ、この本のおかげダ。
日本のアニメが好きだから、日本語を勉強している。
↓
日本語を勉強しているノハ、日本のアニメが好きだからダ。
教科書の例文
特別な格好をしている(大きなリック、登山帽、登山靴)。理由は?
↓
山へ行くノデ、そんな格好をしている。
↓
そんな格好をしているノハ、山へ行くのダ(ろうか)。
↓
(前半部は言語化されず)山へ行くんですか。
どうでせう。これで「ノダ」が全て説明できるとは思ひませんが、26課で扱ふ基本的なものならば、かう考へたはうが学習者への説明もしやすいのでは(この26課「んです」の説明方法に関しては、自分の知るかぎり、多くの教師に迷ひがあるやうに思はれます)。学習者にここで「ノハ」の文法を教へるといふことではなく、言語化されてゐない「ノハ」部分を、導入やドリルの過程できちんと意識付けしていくやうにするといふこと。
「ノデ」について、もつと勉強しなくては。
涉谷(渉谷)は渋谷
台中SOGOデパートの裏手にあるネイルアートのお店の看板。「渋谷」といふ地名をそのまま店名にしてゐるんだなと思ひながら通り過ぎようとして、「渋」ではなく「涉(渉)」であることに気づいた。(ちなみに台湾の字体では右下の点がありません。)
ネットで調べてみると、既に詳しい解説が書かれてゐましたので、そちらを紹介しておきます。
語句楽散歩 : 渋 と 渉
どうも普通の誤字とは少々趣が違う。かなり確信をもって使っているような印象を受けるのだ。とあるやうに、「渋」が「澀」を略したものであることを知りながら、あへて字形の近い「涉(渉)」を使つてゐるといふことらしいです。
「澀谷 渋谷 涉谷(渉谷)」
かう並べてみて、正しいのは左なんだけれど、見た目が近いのは右。で、発音も近いですからね。
ちなみに、中文のWikipediaでは澀谷區になつてをり、以下の注がありました。
「渋谷」常見的譯名有兩種:「澀谷」與「涉谷」。「澀谷」是根據異體字關係轉化而來(中文「澁」為「澀」的異體),「涉谷」則是因為字形相似而來(但「涉」的對應日本漢字實為「渉」),但事實上兩者皆不正確。「渋谷」所對應的正體中文 (傳統中文) 寫法應為「澁谷」,因為依日本漢字簡化規則,「渋」為「澁」的簡化字,「渋」字下的四個小點,即代表上面的「止」字重覆2次 (「摂」亦同此理,為「攝」的簡化字)。而在使用狀況方面,大部分具有官方地位的日本單位與網站在其中文版訊息中,大都使用「澀谷」,而「涉谷」則幾乎都是一般民間用戶以訛傳訛的錯別字用法。政府関係などでは「澀谷」が使はれるが、一般的にはほとんど「涉谷」が用ゐられてゐるとのこと。
【追記】
数日前、迷惑メールの件名の中に以下のやうな表記を見つけました。中文のメールでアダルト動画の宣伝のやうでした。
金呎文子
女優さんの名前で正しくは「金沢文子」でせう。これも、正字・略字の対応は無視し、字形の近さから使用されてゐる漢字の例ではないでせうか。
金澤(正字) 金沢(日本の略字) 金呎(一部中華圏での表記)
問題のメールは削除してしまつたので、Googleで検索してみたところ、かなりヒットしてゐます。
金呎文子 - Google (*リンク先はGoogleの検索結果のページですが、アダルトな内容を含んでゐます。)