涉谷(渉谷)は渋谷


台中SOGOデパートの裏手にあるネイルアートのお店の看板。「渋谷」といふ地名をそのまま店名にしてゐるんだなと思ひながら通り過ぎようとして、「渋」ではなく「涉(渉)」であることに気づいた。(ちなみに台湾の字体では右下の点がありません。)
ネットで調べてみると、既に詳しい解説が書かれてゐましたので、そちらを紹介しておきます。
語句楽散歩 : 渋 と 渉

どうも普通の誤字とは少々趣が違う。かなり確信をもって使っているような印象を受けるのだ。
とあるやうに、「渋」が「澀」を略したものであることを知りながら、あへて字形の近い「涉(渉)」を使つてゐるといふことらしいです。
「澀谷 渋谷 涉谷(渉谷)」
かう並べてみて、正しいのは左なんだけれど、見た目が近いのは右。で、発音も近いですからね。
ちなみに、中文のWikipediaでは澀谷區になつてをり、以下の注がありました。
「渋谷」常見的譯名有兩種:「澀谷」與「涉谷」。「澀谷」是根據異體字關係轉化而來(中文「澁」為「澀」的異體),「涉谷」則是因為字形相似而來(但「涉」的對應日本漢字實為「渉」),但事實上兩者皆不正確。「渋谷」所對應的正體中文 (傳統中文) 寫法應為「澁谷」,因為依日本漢字簡化規則,「渋」為「澁」的簡化字,「渋」字下的四個小點,即代表上面的「止」字重覆2次 (「摂」亦同此理,為「攝」的簡化字)。而在使用狀況方面,大部分具有官方地位的日本單位與網站在其中文版訊息中,大都使用「澀谷」,而「涉谷」則幾乎都是一般民間用戶以訛傳訛的錯別字用法。
政府関係などでは「澀谷」が使はれるが、一般的にはほとんど「涉谷」が用ゐられてゐるとのこと。


【追記】
数日前、迷惑メールの件名の中に以下のやうな表記を見つけました。中文のメールでアダルト動画の宣伝のやうでした。

金呎文子

女優さんの名前で正しくは「金沢文子」でせう。これも、正字・略字の対応は無視し、字形の近さから使用されてゐる漢字の例ではないでせうか。

金澤(正字) 金沢(日本の略字) 金呎(一部中華圏での表記)

問題のメールは削除してしまつたので、Googleで検索してみたところ、かなりヒットしてゐます。
金呎文子 - Google (*リンク先はGoogleの検索結果のページですが、アダルトな内容を含んでゐます。)