地図

自分のクラスに来てくれていた学生の一人が日本に遊びに行って帰ってきた。感想を聞いていたら、日本語が通じなくて焦ったことがあったと言う。この人は日本語能力試験1級にも合格してるし、日常の会話なら全く問題なくこなす。何か込み入ったことでもあったのかと思って、どんな場面でのことだったのか聞いてみると、「本屋で地図を買う時」との答え。えっ?
ちょっと信じられなかったのだけれど、その時どう言ったか、もう一度再現してもらった。
「すみません。○○の地図はありますか」
?! 自分でもびっくり。本当にわからない。問題は「地図」の「ず(づ)」。この人は最初の「ち」の音から、そのままほとんど口を動かさずに、「ち」とほぼ同じ口の形で次の音に続けている。耳だけで聞いたら、聞き取れるかもしれないけれど、顔や口の形を見ながら聞くと、それが「地図」の事を言ってるとは絶対わからない! 日本語を母語とする人だったら、「ち」の後、ほんのわずかかもしれないが、「う」の音の口の形にするため、少し口をすぼめるような動作をしませんか。その微妙な動きがなく、「ち」と同じ口の形で“z”の音が出てくると、「地図」という言葉が頭に浮かばない。これは盲点というか、今まで気づかなかった。