『上級で学ぶ日本語』第一課教案(一)
『上級で学ぶ日本語―テーマ別』第一課「コロンブスの卵」
塾の授業では初日は見学者が多く、教室の雰囲気も最初は授業を受けるといふより、教師とその授業のやり方を観察してやろうといつた感じになつてゐる。みんな後ろのはうの席に坐りたがつたりして。そんな中で、下手に学習者に話しかけて発言を引き出さうとしても、なかなかうまくいかないし、貴重な時間が無駄になつてしまふ。語学のクラスといつても、教師との間にある程度の信頼関係がなければ、特に若い学習者はなかなか口を開いてはくれない。
といふわけで、最初は文法問題から入る。先づは、頭と手を動かしてください。
Q ( )の中に「に」か「を」を書いてください。
- 北朝鮮がミサイルを発射したというニュース( )驚いた。
- 失敗( )恐れる必要はない。
- うちの犬はシャンプー( )嫌がる。
- 卒業後の進路( )悩んでいる。
- 私はその映画( )感動した。
- 最初は緊張していたが、このクラスの明るい雰囲気( )安心した。
これは、感情を表す動詞の場合、「ニ」をとる動詞と、「ヲ」をとる動詞の二種類があるといふ問題。
ちなみに答は、
- 北朝鮮がミサイルを発射したというニュース(に)驚いた。
- 失敗(を)恐れる必要はない。
- うちの犬はシャンプー(を)嫌がる。
- 卒業後の進路(に)悩んでいる。
- 私はその映画(に)感動した。
- 最初は緊張していたが、このクラスの明るい雰囲気(に)安心した。
テキストの第一課が筆者の体験を書いたエッセイであり、本文中に多数の感情表現が出てくるので、その準備としての位置づけ。特に「〜ニ」+感情の動詞といふ形は、初級のテキストで文法項目として説明されてゐるものがないやうなので、このやうな二択の問題でも、みなさんたくさん間違へてくれる。
- 「〜ニ」は、心の動きの「誘因」を表す。「驚く」「びっくりする」「困る」「迷惑する」「怒る」「腹が立つ」「感動する」「失望する」などの動詞。外界の出来事、外からの刺激によつて、一時的に感情が動き、それが表情や身振りなどによつて外に現れやすいもの。
- 「〜ヲ」は、感情が向かふ対象を表す。「悲しむ」「喜ぶ」「楽しむ」「恐れる」「心配する」「憎む」などの動詞。上の「〜ニ」をとる動詞と比べると、その感情は純粋に心の中のもので、外面に現れるかどうかは重要ではない。また、これらの感情は継続的なものある。(『日本語のシンタクスと意味 (第1巻)』を参考に)
(後で書き足す予定)