間違ひ

今日生徒に作文の添削を頼まれて直した部分。どれも北京語話者の典型的な間違ひと言へるものでせう。

  1. ×家庭主婦→主婦
  2. ×夜の時→夜
  3. ×おいしいの物→おいしい物

一つ目は、北京語の語彙をそのまま使つた誤り。北京語では「主婦」だけでなく、必ず「家庭」をつけた形になります。同じ漢字を使うといふ気安さからか、特に作文ではこの手の間違ひが多く、「誘拐された」を「綁架された」などと平然と書いてきます。
次は文法に関するもの。日本語では「名詞」自体が時間を表すものの場合、「時」はつけないのですが、北京語では「晩上的時候(夜の時)」「夏天的時候(夏の時)」といつた表現が普通なのです。三つ目も文法。名詞を修飾する場合、北京語は必ず「的」を使ひ、「我的東西(私「の」物)」「好吃的東西(おいしい「の」物)」と言ふのですね。
第二言語習得に関する本を読むと、「母語の干渉を受ける誤りは、発音には多く見られるが、文法や語彙に関しては実は少なく、誤りはむしろ母語と関係なく起きる場合が多い」といつた記述があるのですが、上の三つの誤りは、明らかに母語の干渉でせう。そして、これがなかなか直りません。上の作文を書いた生徒も、日本語能力試験の二級ぐらゐは合格できる力を持つてゐる人なんですが、いざ自分で書いたり、話したりといふことになると、かういつた間違ひが出てきてしまひます。


さて、上の三つは確かに「間違ひ」ではあるのですが、こちらでの生活も長くなり、しかも自分自身日常生活では台湾の言葉を使つてゐると、これらを「間違ひ」だとはあまり感じなくなるのですね。「夜の時」などは下手をすると自分でも言つてしまひさうになります(笑)。教師としてはまずいのですが、授業を離れた会話では、いちいち話を止めて「それは間違ひだ」と指摘するのも変ですからね。
【追記】
浦木裕(id:kuonkizuna)さんからいただいたコメントに関して、buttwさんのところに関連記事があります。

浦木裕さん、buttwさん、ありがたうございます。いつも勉強になります。