「男らしい」「男つぽい」「男みたいな」

用法が似てゐる言葉で、よく質問されるもののひとつに、「らしい」「ぽい」「みたい(やうだ)」の使ひ分けがある。これは、北京語話者の人たちには難しいやうで、台湾人の日本語教師の方でも間違つて使つてゐることがよくある。ごちやごちや説明しても、みんなすぐ忘れてしまふだけなので、自分なりに簡単な説明方法を考へてみた。以下の六つで説明。

  1. 女らしい男(×)
  2. 男らしい男(○)
  3. 男つぽい男(○)
  4. 女つぽい男(○)
  5. 女みたいな男(○)=女のやうな男(○)
  6. 男みたいな男(×)=男のやうな男(×)

まず、「らしい」の意味として「その条件を満たしてゐる/典型的な特質を備えてゐる」と説明。みんなが考へる(または、台湾での一般的な)「男の条件」を列挙してもらふ。「責任感がある」、「女、子どもなど弱者を守る」、「一家を食はせる」などが以前のクラスで出た。ある程度「男の条件」が出揃つたところで、男子生徒の名前をあげ、「さて、このAくんは、これらの男の条件を満たしてゐますか」と問ひかける。条件のリストをひとつづつチェックした後、「はい、Aくんは男らしい男です/男らしくない男です」。「XらしいY」の場合、XとYは同じものでなければならいので、「女らしい男」はバツとなる*1
次に「ぽい」。これは、「その性質を多く含んでゐる」と説明。これは、図を描くとわかりやすいか。「水つぽいコーヒー」などのやうに、コーヒーの中の水の部分が多い、と。それから、ハート(心)の絵を描き、その中の「男性性」が増えると、男つぽくなる。女性でも「男性ホルモン」があるやうに、この「ぽい」の場合、男性・女性を問わず使える。
「男らしい男」と「男つぽい男」は同じやうな意味で用ゐるが、「らしい」の場合は「社会的に肯定的捉へられてゐる特質」、「男つぽい」では、ひげが濃いなどといつた肉体的、外見的な部分について言ふことが多いのではないかな。とりあえずクラスでは「ほぼ同じ」といふ説明だけにしておかう。「らしい」は他にも「先生らしい先生」や「学生らしくもつと勉強しろ」など、社会的な規範が前提になつてをり、それにかなつてゐるといふニュアンスがあるやうだ。*2一方、「ぽい」は「水つぽい」や「白つぽい」などを見ても、それ自体では「いい/悪い」という価値判断はなく、中立的な表現か。(ただ、「子供つぽい」では幼稚といふ意味で、マイナス評価になる。)
それから、「みたい(やうだ)」の場合は、「本当は違ふものだが、よく似てゐる」と説明。だから、「男みたいな男」はバツ。「女つぽい男」と「女みたいな男」はほぼ同じような使い方と言つていいだろう。
では、明日の授業で説明してみよう。以上リハーサル終り。

*1:ちなみに、以前女子プロレスラー神取忍は「男らしい女」と呼ばれてゐたが、これは非常におもしろい言葉遊びだと思ふ。

*2:しかし、「男らしい」とか「女らしい」とか自分ではあまり使ひたくない表現ではあるな。別の例文にしたはうがいいかな。