導入・・・。

教室

みんなの日本語』というテキストを使って授業をする場合、通常「導入→ドリル→応用練習」という流れで進めます。
「導入」というのは、その日に扱う文型の意味、その文型が使用される状況などを学習者に理解させる段階です。既習の語彙、絵カード、実物教材、ジェスチャーなどを総動員して教師が演じなければならない部分で、教師の腕の見せ所でもあります。
台湾で教える場合、学習者の母語が同じなので、中国語で訳して、さらっと意味を与えてもいいのですが、文型によっては適当な訳語がない場合もあるし、あってもニュアンスが違うこともあるため、この「導入」の部分はできるだけ中国語なしでやりたいと思っています。
例えば、21課の「〜と思います(推量)」の場合、自分がやる導入は―
厚手の布製の袋にいろいろなモノを入れて、それを学習者に触らせる。
「これは何ですか」
「(たぶん・きっと)りんごだと思います」
果物でやる場合、りんご→なし→みかん→レモン などと次々に回し、最後にテニスボールなどを入れて、オチをつけると盛り上がる。
この「盛り上がる」というのがポイントで、「導入」ではインパクトが命。後々まで学習者が覚えていてくれるほどの印象を残せればといつも知恵を絞っています。
また、マージャン牌を使って、モーパイ(牌を見ずに指の腹で触って図柄を当てる)で導入することもできます。台湾ではマージャンが盛んなので、おばさんたちなどはかなりノッてくれます。「う〜ん、これは二万だと思います」とかね(笑)。(*いつもは、比較的わかりやすいピンズを使ってます)
この「導入」の後に、ドリル。この課の場合は、「と」の前は「普通形」になるといった規則を口頭でのドリルを中心に繰り返し、定着させる。
「りんごです。」→「りんごだと思います。」
「雨が降ります。」→「雨が降ると思います。」等・・・。
で、こういう話をえんえんと書いたのは、きのうこれと同じ話を新しく来た先生にしたから。しかし、彼女はきょとんとして、「そんなことが必要なんですか・・・」と。彼女は、もう10年も日本語を教えているという話なんですが、絵カード一枚授業に持ってきません。教案も書きません。自分にとっては、唖然とすることばかり。もちろん、学習者がわかってくれれればどんな授業やったっていいんでしょうが・・・。なんか、やりきれない気分でした。