会話クラス

ここ数年、進学系の塾で教へてゐるため、各種試験対策のクラスがほとんどだつたのだが、今年から「会話クラス」が開講され、自分が担当することになつた。二年前の研修会で学んだことを、やつと直接活かせる機会を得たことになる(→二年前の夏季研修会 http://d.hatena.ne.jp/tinuyama/20040728)。
毎回学習者に簡単なロールプレイをやつてもらひ、その後で教師が学習者の会話を直したり、重要表現を解説したりするといふ、所謂「タスク先行型」で進めてゐる。
実は、自分が学生だつた時は英語の授業でのペアワークが苦手で、といふか嫌でならなかつた(「なんで日本人同士で英語話さなければならないのよ」とか)ので、こちらの学生の反応が気になつてゐたのだけれど、台湾の学習者は皆さん協力的で、その点は非常に助かつてゐる。まあ、学校ではなく塾なので、やる気のない人は最初から来ないといふ教師にとつては恵まれた環境なのだけれど。以下メモ。

  • ロールプレイの指示(ロールカード)は中国語で与へてゐる。日本語で指示を与へると、その文章の中にヒントが多く含まれることになつてしまつたり、日本語での指示が読み取れないといふこともあるので。このロールカードは、予習できるやうに実際にロールプレイを行ふ一週間前に渡してゐる。当日のペアでの打ち合わせの時間を短縮したいからなのだけれど、みなさん忙しいやうで、準備してくる人は残念ながら現時点では少ない。
  • 学習者が一人である程度の分量の日本語を話し続けるのを聴くのは非常に新鮮。他のクラスでは、学習者の発言はほとんど文単位になつてしまふものな(初級でのパターン練習にしろ、一級での文法解説にしろ)。長く話せば、その分その学習者の問題点がよくわかる。まづ、みなさん「んです」が使へない。そして、所謂「丁寧体(敬体)」と「普通体(常体)」の混用。頭ではわかつてゐても、咄嗟に使ひ分けるのは本当に難しさうだ。それから、女性が「普通体」で話さうとすると、「男言葉」になつてしまふ問題。例へば「大丈夫だよ」と「大丈夫よ」など。
  • 言葉以外の問題。「誘ふ→断る」といふロールプレイを行つた際、ほとんどのグループの「断る側」の学習者が「家に帰りたい」といふ言葉を口にしたので、驚いた。「今晩飲みに行きませんか」→「今日は疲れてゐるので、家に帰りたいです」、「今日カラオケに行きませんか」→「今日は体の調子が悪いので、家に帰りたいです」等。台湾では誘ひを断る時はよく「我想回家」といふさうなのだが、日本人は「家に帰りたい」といふかな……。「たい」が問題か。日本人は「自分はかうしたい」と自分の欲求や希望を口にするのではなく、「(自分の意志にかかはらず)かうしなければならない」といつた表現を選ぶのではないだらうか。