所謂「書き換え字」について聞いてみた

十月六日の日記の続きです。(→「交差点」について聞いてみた
上のエントリーに対してid:buttwさんより「常用漢字の書き換えのほうが影響はもっと大きいと思います」とのコメントをいただいたので、今回は台湾人の日本語学習者がどの程度「書き換え字」を知つてゐるのか、簡単にですが、調べてみました。下の「書き換え字」を書いた紙を渡し、隣に本来の漢字を書いてもらふ形式です。対象は今日の日本語能力試験一級対策のクラスに来た十九名。一級を受けようといふのだから、日本語の学習期間はかなり長いはずで、半数以上が大学生です。(ただ厳密な調査ではないことをお断りしておきます。休憩時間前に慌しく行つたので、自分の意図を理解してもらへなかつた人もゐました。有効回答数が十九といふことです。)

慰謝、援護、回復、壊滅、活発、義援、企画、気迫、技量、台頭、退廃、知恵、転倒、反乱、腐食、編集、放物線、輪郭、連合、湾曲

さて、結果はといふと……。

「書き換え字」 正字 正解者数
慰謝 慰藉 2/19
援護 掩護 0/19
回復 恢復 8/19
壊滅 潰滅 0/19
活発 活潑 14/19
義援 義捐 0/19
企画 企劃 6/19
気迫 氣魄 9/19
技量 技倆 0/19
台頭 擡頭 18/19
退廃 頽廢 4/19
知恵 智慧 12/19
転倒 顚倒 5/19
反乱 叛亂 5/19
腐食 腐蝕 10/19
編集 編輯 10/19
放物線 抛物線 2/19
輪郭 輪廓 14/19
連合 聯合 17/19
湾曲 彎曲 16/19

文脈に沿つて読めば類推できることもあるでせうが、漢字だけ取り出した場合は、このやうな結果となりました。正解者ゼロが「援護/掩護」「壊滅/潰滅」「義援/義捐」「技量/技倆」。もし台湾の人と筆談する場合などありましたら、ご注意を。
間違つた答としては、「放物線→放射線」、「義援→支援」、「技量→計量」、「壊滅→幻滅」、「壊滅→破滅」、「転倒→跌倒」などが出てきました。このへんは授業中に出てきた時はきちんと教へなければならないですね。漢字の語彙は教師も学習者も「だいたい同じだらう」と高を括つて、辞書をひいてみることはほとんどありませんから。学習者はともかく、教師たるもの正確な知識を持つてゐなければならないと思ひます(汗)。
一番正解が多かつたのは「台頭/擡頭」なのですが、全員略字の「抬」で書いてきました。他にも「聯」「彎」など略字で書いた人もゐましたが、それも正解に含めてゐます。
それから、高島俊男の『お言葉ですが』などで取り上げられてゐた「選考/銓衡」も上のリストに加へてゐたのですが、現代の台湾では「銓衡」といふ言葉がない(?)といふことらしいので、結果から外してゐます。*1
とにかく授業中の漢字の扱ひに、もう少し気をつけなければならないと痛感いたしました。

*1:では「選考/銓衡」に相当する言葉は何だらうと思ひ、学習者用の日中辞典を見てみると「選抜人才」と。