「ほど」と「くらゐ」

土曜日台北でのクラスが終つて台中へ帰る列車の中、クーラーが効きすぎてゐて鼻水が止まらなくなる。こんなに暑いのに、来週は上着を持つて行かねばならないか。
さて、最近「ほど」と「くらゐ」の使ひ分けについて質問を受けたので、メモしておく。

車内はがたがた震へるほど寒かつた。(○)
車内はがたがた震へるくらゐ寒かつた。(○)

「ほど」「くらゐ」には様々な用法があるが、具体例や比喩を使つて動作や状態の程度を説明する表現の場合、基本的には両者同じやうに使へる。ただ……。

死ぬほど寒い。(○)
死ぬくらゐ寒い。(×)

このやうに大袈裟な表現の場合、「くらゐ」は不自然になる。「ほど」が程度の度合を漠然と示すのに対して、「くらゐ」は例示の明確な基準を示すからだらうか。実際に死ぬことはないわけだから。『日本語文型辞典』*1では、「程度がはなはだしい場合には、「くらい」は使えない」と説明されてゐる。それで、他にも「程度がはなはだしい場合」を考へてみた。

飛び上がるほど驚いた。
飛び上がるくらゐ驚いた。

Googleで検索してみると、前者は1970件、後者は74件ヒット*2。差は圧倒的だが、個人的には「くらゐ」でも間違ひとは言へないだらうと思ふ。

喉から手が出るほど欲しい。
喉から手が出るくらゐ欲しい。

前者は6060件、後者は2111件。「喉から手が出る」なんてことはあり得ないのだが、「くらゐ」も多く使はれてゐる。
授業ではあまり余計な説明はせずに、「死ぬほど」だけを慣用表現として例外扱ひにして教へたはうがいいかも。

*1:ISBN:4874241549

*2:「くらい」と「ぐらい」の合計