日本人になれ……

外国人力士はなぜ日本語がうまいのか―あなたに役立つ「ことば習得」のコツ

外国人力士はなぜ日本語がうまいのか―あなたに役立つ「ことば習得」のコツ

来日したばかりのころの失敗談や余暇の過ごし方など、興味深い話も多く、外国人力士へのインタビュー集として読めばおもしろいかも。ただ、「ことば習得のコツ」といふ点では、自分がこちらで接してゐる日本語学習者とはやはり環境が違ひすぎるので、何とも言へない。
著者は外国人力士の日本語習得過程が「イマージョンプログラム*1」に酷似してゐると言ふ。「二十四時間日本語漬け」であるとか「バラエティのある日本人ネットワーク」などといつた点は、海外にゐる学習者にとつて実現不可能ではあるものの、努力目標として参考にはなる。しかし、絶対真似できない点として、外国人力士の場合、相撲界の価値観をそのまま受け入れなければならないといふことがあると思ふ。教へる側(親方やおかみさんなど)の指導は絶対であり、学ぶ側も「力士になる」といふ強い意志がある。「生活も言葉も心の中も全部日本人になってもらいたいですね」と、ある親方の言葉が紹介されてゐるが、相撲の親方ならともかく、語学教師には言へない言葉。
また当然のことながら、力士になれなかつた人たちもゐるはずでせう。

*1:第二言語そのものを学ぶのではなく、第二言語を使つて情報処理を行うことを目標としてゐるもの(同書より)。カナダでのフランス語と英語のバイリンガル教育の中で発達してきたものらしい。