『高野聖』泉鏡花 

深い山の中の孤家(ひとつや)に住む婦人(をんな)は近づく男たちを獣にする。高野の旅僧が語る怪異。asin:4101056013
泉鏡花を読むのは初めて。内容もさることながら、まづ文章(文体)に楽しませてもらつた。日ごろ日本語教科書の味気ない文ばかり目にしてゐので、この体言止を多用したリズム感のある文体が非常に心地よく感じる。これが同じ「日本語」だとは。先に進むのが惜しくて、途中気に入つた箇所を何度も読み返したりした。かういふ読書体験は初めて。

すると、婦人が、下ぶくれな顔にえくぼを刻んで、三つばかりはきはきと続けて頷いた。

「えくぼを刻む」なんて表現は格好いいなあと思ふ。