(続き)

今回の研修のポイントは、おおざっぱに言うと、会話練習・聞き取り練習などの授業活動を、一般的な流れとは逆に進めてみる、ということだったと思う。
会話練習の場合を考えると、従来『みんなの日本語』などのテキストでは、語彙や表現形式(「〜てください(依頼)」とか「〜そうです(伝聞)」のような文の型)を導入し、文レベルでのドリル(パターンプラクティス)を経た後、その単元で習った「型」を使った会話例を読んだり、ロールプレイをやってみるという流れが一般的だ。聞き取り練習にしても、習ったばかりの「型」を聞けるかどうかという確認に使うことが多い。しかし、「それで、おもしろいか?」と。学習者の言語能力を引き上げることができるのだろうか、と。
それで、それとは逆の「タスク先行型」という流れについての研修だった。最初にいきなり学習者(二人一組)にタスク(指示)を与え、その指示に沿ったロールプレイをやらせる。例えば、AはBをコンサートに誘うが、Bは相手を傷つけないようにその誘いを断る、といった指示。そして、そこで出来てきた会話に対して、教師が後からその場面での有用な表現形式や語彙を教えていくという流れになる。
この方式は、一面「でたとこ勝負」というか、会話の内容が完全には予測できないので、臨機応変に適切な指示が出せるかという点で、教師の「引き出し」の多さが問われる(ただ間違いを直すというだけでなく、学習者の程度によっては、目をつぶって流したほうがいい時もあり、その間の線引きも難しい)。同時に、学習者のレベルに応じた適切な場面設定や最初の指示の出し方にも気を配らなければならず準備の時間も相当必要になるだろう。
「今日の授業は『受身』です」などと言って喜ぶ生徒はいないだろう。しかし、「今日の授業は『デート』です」ということだったら、のってくるかもしれない。変に生徒に「こびる」必要はないけれど、それぞれの学習者が遭遇する可能性が高い場面を想定し、そこで使える表現を、学習者が「言いたい」と思った表現を教えていこうというもの。
今自分がやっているカリキュラムにそのまま組み入れることは難しいが、いろいろ応用はできそうだ。


それから、研修の途中で気づいたのですが、実は、自分は今回の講師の方の著作(共著)を持っていました。去年買って読みかけのままだったもの。せっかくなので、二日目に持って行ってサインしてもらってきました。

  • 『ACTFL‐OPI入門―日本語学習者の「話す力」を客観的に測る』ASIN:4757402740 *1

山内先生、ありがとうございました。

*1:ACTFL‐OPI入門―日本語学習者の「話す力」を客観的に測る