受身 どうしてしかられたの?

みんなの日本語』では第37課で勉強する。
みんなの日本語―初級2本冊
一回目のクラスでは導入、及び直接受身のドリル。
先生は陳さんをしかりました。
⇒陳さんは先生にしかられました
導入は絵を見せて行う。一枚目の絵は、怒っている先生の顔のアップと陳さんの後姿を描いたもの(先生は陳さんをしかりました)。この場面の「主役」は先生であると説明。二枚目の絵は、泣きそうな陳さんの顔のアップと先生の後姿(陳さんは先生にしかられました)。「主役」は陳さんであると説明。動作主は格助詞「に」で示される「先生」なのだが、スポットライトを浴びる「主役」は先生の動作によって「影響を受ける」陳さんになる。この直接受身の形であれば、中国語にも対応する表現があり、簡単に理解してもらえるが、次回の「間接受身」の説明につなげるために、「主役」が交替していることを強調しておく。
活用形を動詞の絵カードで確認した後、簡単なドリル。まず「しかられる」を定着させるために、次のような会話を。
T(教師):林さんは子供の時、しかられましたか。
S(生徒):はい、よくしかられました。
T:誰にしかられましたか。(「に」が動作主を示すことを確認)
S:父にしかられました。
T:どうしてしかられたんですか。
S:外で遊びましたから・・・。
T: ・・・?

さて、台湾でこの質問をすると、どのクラスでも「外へ遊びに行ったから」という答えが返って来る。自分は田舎で育った(九州)こともあり、「子供は外で遊んで来い! 家の中にいるな」というようなことをよく言われていたし、学校から帰ると、かばんを放り出して、外へ行くのが普通だった。
が、しかし、台湾の常識では「外で遊ぶ」というのは、どうも「悪い」ことらしいのだ。都市部では、だいたい遊ぶ場所も少ないし、治安の悪さもあるのだろう。実際、複数の子供がつるんで遊んでいるような場面もほとんど見かけない。
じゃあ、子供たちは学校が終わってから、どこへ行くのかというと、塾や、「安親班」と呼ばれる託児所のようなところへ行かされるだ。
自分の勤務先の塾にも幼稚園児、小学生向けの日本語のクラス*1があり、週に数回母親に連れられて子供たちがやってくる。ここに来ない日は、英語や水泳などの教室へ行かされている。彼らのスケジュールは文字通り分刻みだったりするのだ。彼らは、学校が終わって「今日は何をしようか?」と考えたことなどないのだろうなと思うと、さすがにかわいそうになってくる。

*1:自分は子供クラスはやらないことにしている。自分の意志で日本語を選べない年齢の子には教えたくない。