「お宅の子供を預かっている。帰してほしくば・・・」

自分の日本語のクラスに、陳さんと言う30代前半の女性がいる。彼女には台中市内の小学生に通うお子さんがいる。
先週、陳さんに「香港の旅行会社の者ですが・・・」と女性から電話があった。陳さんは興味もなく、忙しい時だったので、すぐに電話を切ったそうだ。
で、その数日後、陳さんが子供のクラスメートのお母さんから聞かされた話。このお母さんを「林さん」としておく。
林さんのところにも、「香港の旅行会社」からという電話があったそうだ。林さんは陳さんと違って、電話の相手と少しだが話をしたという。海外旅行の経験とか、家族のこととか・・・。
翌日。林さんのところに再び電話が。「お宅の子供を預かっている。声を聞いてみろ」「(「ママ〜、ママ〜」と泣き叫ぶ子供の声)」「帰してほしくば、この銀行口座に9万元振り込め。20分以内にだ。」
口座番号を言うなり、切れる電話。
電話で聞かされた声は自分の子供によく似ている!と動揺したものの、林さんはすぐさま学校に電話してみた。果たして、子供はちゃんと教室で授業を受けているとのこと・・・。
林さんは、警察に届け出たのだが、林さんの携帯に残っている番号は中国大陸のもので、すぐに調べることはできないという。恐らく、調べても無駄だろうと。事前の電話で、小さい子供がいると確認できた家庭に「脅迫電話」をかけまくっていたらしい。
20分以内、9万元という金額がみそ。台湾では、大卒の初任給が2万5千元から3万元程度。おおざっぱな言い方をすると、月収の3倍。この金額なら、すぐに(20分以内に)動かせる人も少なくないだろう。慌てた人や、子供の安否がすぐには確認できなかった人は、振り込むかもしれない・・・。
よくこういう手を考えるものだ。
他にも、最近台湾でよく耳にする犯罪に、自動車泥棒がある。「お宅の自動車を預かっている。返してほしくば、1万元持って来い」と。金額は、もっと少ない場合もある。現実的な金額。このくらいだと、警察に届けずにお金を払って車を取り戻す人が多いらしい。