「とあつて」

日本語能力試験一級で出題される文型(機能語)の一つ。典型的な例文としては次のやうなもの。

  • 晴天の日曜日とあつて、観光地はどこも大変な人出だつた。

理由を表す表現で、意味的には「〜から」「〜ので」とほぼ同じ。この文型ならではのニュアンスをどう説明すればよいかと考へてゐたら、『どんな時どう使う 日本語表現文型500』(ISBN:4872345894)に「後ろの文では特別な様子や状況についての話す人の観察を言う」とある。なるほど、これは使へる。前件を提示し、その状況下での「観察」を学習者に答へてもらふ形の練習を用意。

陰暦八月十五日をこちらでは「中秋節」と云ふ。このまま日本語の文に使ふと違和感があるが、学習者が実際に「観察」できる状況を優先。こちらに住んでゐる日本人相手になら通じると思ふし。想定してゐた後件は「どこへ行つても月餅が売られてゐる」。台湾では中秋節が近づくと、あらゆる所に月餅が。スターバックスにも置いてある。
他に学習者から出てきた後件は「バーベキューセットがいろんな所で売られてゐる」や「あちこちでバーベキューをしてゐる」など。今は中秋節といふと、月餅より焼肉なのか。

  • 四時間授業の最後の三十分とあつて、

これも学習者が実際に「観察」できる状況として。せめて二時間のクラスを週に二回にすることができればいいのだけれど、台湾の塾では週末にクラスが集中してしまふ場合が多い。この自分のクラスも、途中に昼食のための休憩一時間を挟んだ四時間授業。後件はクラスの様子を観察してもらつて、「みんな元気がない」「みんな顔が死んでゐる」など。
ただ、この「とあつて」、各種参考書を見ると、名詞または動詞の辞書形につくと書いてある。自分では「近いとあつて」も大丈夫だらうと判断して例文に使つてみたのだが、どうなのだらうか。ちなみにGoogleでは五百件程度出てくる。