『お言葉ですが…〈6〉』

お言葉ですが…〈6〉イチレツランパン破裂して (文春文庫)

お言葉ですが…〈6〉イチレツランパン破裂して (文春文庫)

週末の長距離通勤の時のためにとつておかうかとも思つたのだけれど、結局最後まで読んでしまつた。週末は以前の『お言葉ですが…』を読み返さう。
この第六冊では「白髪三千丈」の話がおもしろかつた。中国語で大げさな数としてよく持ち出される「三千」が、どうして「三万」や「九千」ではなく「三千」でなければならないのかといふことの説明。詩の規則として平声と仄声の組合せが決まつてゐて、ほぼ半々に出てくるのだが、十五の数詞*1のうち平声は「三」と「千」だけなのださうだ。だから詩の調子を整へるためには、必然的に「三」と「千」の出番が多くなるとのこと。
実はこれ、自分も以前一度生徒に聞いてみたことがあつた。いつだつたか授業中『源氏物語』の話になつた時、突然「日本の後宮には何人ぐらゐの女性がゐたのですか」との質問が出た。「まあ十人から三十人ぐらゐでせう」と答へたところ、「中国では三千人ですよ!」と得意気(?)なコメントが返つて来た。「長恨歌」にもさう書いてあると言ふ。その時にこの生徒自身がこの三千といふのは実数ではなく「多い」といふ意味だと説明してくれて、それに対して自分が「なぜ他の数ぢやなくて三千なの?」と聞いてみたのだつた。しかし、その時は彼の日本語、そして自分の中国語の力では話が通じなくて結局うやむやになつてしまつたのだが、彼が言ひたかつたのは、これだつたのかな。


と、ここまで書いて、平声と仄声について何か説明がないかと検索してゐたら、下のサイトを見つけてしまつた。

ここでは「長恨歌」の「後宮佳麗三千人」の部分の平仄声の表示が「後(仄)宮(平)佳(平)麗(仄)三(仄)千(平)人(平)」となつてゐる。「三千」が「仄平」。あれ?
ちなみに、李白の「秋浦歌」を検索してみると、別のサイトだが「白髮三千丈(平仄平平仄)」となつてゐる。「三千」は「平平」

うむ……。よくわからん。

*1:一から十、百、千、万、両、半