古事記の読み方

古事記の読み方―八百万の神の物語 (岩波新書 新赤版 (864))

古事記の読み方―八百万の神の物語 (岩波新書 新赤版 (864))

古代語の「ハラ=原」(高天原葦原中国、海原)が意味する空間など、言葉の意味に関する記述がおもしろい。(第一章「古事記の神話空間」)
また、表意漢字と音仮名表記が混在してゐる部分で、擬音語・擬態語的な言葉が音仮名表記されてゐる例が多いといふ指摘は非常に興味深い。擬音語をカタカナで書くやうな現代の表記法に通じる。これは原文で読まないとわからないよな。(第三章「母なることば」)
非常に読み応へのある本だつたのですが、個人的に一番驚いたのはこれ。

人の身体部位を表す「目」「鼻」「歯」「耳」ということばが、それぞれ「芽」「花」「葉」「実」という植物の部位を表すことばに対応している(p.15)

日本語教師などといふ仕事をしてゐるにもかかはらず、全く気づいてゐませんでした。漢字表記されてゐると全く別物に感じるものなあ。他にも「カラ」と「カラダ」、古代語では手足を「エダ」と言つたことから、身体部位と植物の部位を表す言葉はほぼ対応してゐるとのこと。古語辞典(岩波)をひいてみると、「目」の項に「芽と同根」とある。知らなかつた。