『台湾総統列伝』本田善彦 ASIN:4121501322

台中の紀伊國屋で。蔣介石から陳水扁までの歴代総統を通して描く台湾現代史。
あまり知られていない蔣經國の功績、“壊れていく”李登輝陳水扁政権の誕生と迷走など、複雑極まる台湾の状況が丁寧にわかりやすく記述されていて、非常に勉強になる。
著者は台湾在住のジャーナリストということだが、すばらしい仕事だと思う。(銭衝さんのところにもレビューが。 id:QianChong:20040615#p2)
自分は、司馬遼太郎の『台湾紀行』をはじめ、多くの台湾本に見られる「親日台湾」の描写に何とも言えない違和感を感じ、最近は台湾関係の本にもあまり手を出さなくなってしまっていたのだが、この本ではそういった状況も批判されている(第五章 歪められた台湾像)。現在の台湾では一部に過ぎない「親日家」を主流であるかのように伝える虚構は、結局のところ相互理解を妨げるだけのものでしかない。


この本の最後に紹介されている元駐日代表・林金茎の言葉をここにも引いておきたい。

「台湾と日本の関係は、私たち日本教育を受けた世代が、窓口を務めてきた。しかしそれは結果的に、日本国民が実際に台湾の人々の声を聞く機会がないという悪い結果を生んだ。私たち世代が退き、是々非々で日本と渡り合える若い人の出現こそ、日本の人が台湾の人々の心理を知るうえで必要なのではないかと思う」。(p.297)
元駐日代表・林金茎

台湾で日本語教師を生業とする者のはしくれとして、日本語を使って「日本と渡り合える若い人」を育てることの一助にでもなればと思い、毎日教壇に立っています。
台湾総統列伝―米中関係の裏面史 (中公新書ラクレ)