「次第」

上の『渇きの海』を読んでゐて目にとまつた表現、「終わりしだい」。

これが完成すれば、われわれはただちに空気の供給を――さらに、もし必要なら、食糧と水の供給も――開始する予定であります。したがって、このパイプのとりつけが終わりしだい、みなさんがたには、なんの心配もなくなるわけであります。(P.229)

日本語教師用の参考書などには、「ほとんど同時に/その後すぐ」といふ意味を表す「連用形+次第」の後件に来るのは意志的な動作(命令・依頼・意志)に限られるといふ記述があります。典型的な用法は下のやうなもの。

  • 雨が止み次第、出発しよう。
  • ご注文があり次第、発送いたします。

この点が、過去のみで使ふ同種の文型「た途端に」などと異なる点で教室での指導のポイントになります(参考→id:tinuyama:20050804#tatotan)。
しかし、『渇きの海』の翻訳文の場合、「しだい」の後件は「なんの心配もなくなる」と、意志的な表現ではありません。自分は仕事柄この部分が目についてしまつたのですが、これをお読みになつた方、どうでせうか。違和感があるでせうか。
ちよつとGoogleで検索してみました。(動詞の連用形にあたる「き次第」「し次第」「ち次第」「り次第」などで検索し、最初の五十件程度をざらつと見てみました。)
自分が見つけた「意志的な表現でないもの」は以下の二つ。

  • 現状の調査ができ次第、具体的な支援の要請が現地から来る予定になっております。
  • 作業終了し次第、通常どおりご利用になれます。

微妙。明らかに不自然といふわけでもないが……。どうなのかな。